事故物件で告知義務が発生する場合はどんなとき?告知すべき内容や注意点を紹介
事故物件とは「心理的瑕疵がある物件」のことを指します。多くの人は、人が亡くなった場合は事故物件だと思いがちですが、亡くなった理由によっては事故物件とはならないこともあります。
本記事では、事故物件の対象となる物件や告知すべき内容について紹介します。また、告知義務に違反した場合の影響や、注意すべき点についても解説するため、ぜひ参考にしてください。
事故物件で告知義務となる対象は?
心理的瑕疵物件とは、過去に事件や事故があった場所、または特定の事情により居住者に不安や嫌悪感を抱かせる可能性のある物件を指します。事故物件には告知義務が発生し、売主や貸主はその事実を伝える必要があります。
人が亡くなる理由はさまざまですが、大きく分けると「殺人」「自殺」「自然死」の3つに分類されます。しかし、これらの事例をすべて同じように「事故物件」として扱うべきかどうかは、基準が非常にあいまいです。
2021年10月に国土交通省が発表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によって、ある程度基準が統一されました。しかし、このガイドラインに法的な強制力はないため、事故物件かどうかを判断するのは依然として不動産業者の判断に委ねられています。
以下では、心理的瑕疵を含む物件の瑕疵の種類や告知義務について詳しく解説します。
物件における瑕疵の種類
物件における瑕疵は「物理的瑕疵」「心理的瑕疵」「法的瑕疵」「環境的瑕疵」の4種類です。
ひとつ目の物理的瑕疵物件とは、建物に欠陥や破損、その他の機能的な不具合があるものを指します。代表的なものとしては、雨漏り、壁のひび割れ、シロアリ被害、排水管の破損や耐震強度の不足などが挙げられます。
土壌汚染や地盤沈下、地中に埋まっている障害物など、土地そのものにも適用されます。
2つ目は心理的瑕疵物件です。これは物理的な不具合ではなく、これから住む人が心理的に抵抗を感じたり、嫌悪感を抱いたりするおそれがある物件を指します。自殺や殺人事件、事故による死亡事案など、人の死が絡む現場となってしまった物件がこれに該当します。
また、刑務所や火葬場、風俗店、下水処理場など、一般的に嫌悪される施設がそばにあるという場合も、この心理的瑕疵物件に該当します。
3つ目の法的瑕疵物件は、何らかの法に触れているため自由な利用が制限されてしまう物件です。主に建築基準法や都市計画法、消防法に触れている場合が多く、この場合は再建築やリフォームができないことがあります。
4つ目は環境的瑕疵物件です。これは物件そのものではなく、周辺の環境に問題がある場合を指します。たとえば、工場が近く、日中に騒音や振動が絶えない、ゴミ処理施設から悪臭がするなどが代表的な例となります。
告知義務の対象となる事案
人が亡くなった物件で告知義務の対象となるのは、以下のとおりです。
●自殺が発生した場合
●他殺が発生した場合
●火災による死亡があった場合
●死亡が原因で特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合
●借主・買主から問われた場合
●社会的な影響の大きさなどから、借主・買主が把握しておくべき特段の事情があると判断した場合
賃貸物件では、発生もしくは発覚してから約3年間の間は告知義務があり、それ以降はありません。しかし、売買取引における心理的瑕疵の告知期間は、ガイドライン上で明確にはなっていません。
また、年数にかかわらず、借主や買主から告知義務について質問があった場合や、社会的影響が大きいと判断される場合には、告知義務が発生します。
告知義務の対象外となる事案
人が亡くなった場合でも、必ずしも告知義務が発生するわけではありません。たとえば、死亡の理由が老衰や病死などの自然死であった場合や、転倒事故や入浴中の溺死など、日常生活の中で発生した不慮の事故死の場合は、告知義務の対象外となります。
しかし、発覚が遅れ、特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、死亡の原因に関係なく告知義務が発生します。
また、同じ集合住宅内の別の部屋や共用部分での死亡の場合、自殺や殺人事件であっても、告知義務は発生しません。このような場合、告知義務が求められるのは、死亡が発生した部屋や個別の居住空間に限られます。
事故物件における告知すべき内容は?
事故物件において告知すべき内容は「発生時期や発生場所」「死因」「特殊清掃の有無」「情報開示状況」の4つです。以下でそれぞれについて解説します。
発生時期や発生場所
その死亡に関する事故または事件が起こったのはいつ頃なのか、発生時期を明確にして伝える必要があります。また、その具体的な現場についても同様です。
死因
死因は心理的瑕疵において大変重要な事項です。自殺だったのか、もしくは事件があったのか、他殺なのかなど事件の内容をできる限り伝える義務があります。
先述したとおり、病死や老衰、または日常生活の中で起きる「不慮の事故死」の場合は、告知義務は発生しません。そのため、先方から質問がない限り、こうした情報を伝える必要はありません。
特殊清掃の有無
死亡した事案に関連して、特殊清掃が行われたかどうかも明確にする必要があります。特殊清掃が必要となるほど物件の状態が悪化した場合、心理的瑕疵に該当する可能性が高いです。
こうした場合には、いつ、どこを、どのようにして清掃したのかといった詳細な情報を伝える義務があります。
また、大規模なリフォームが行われた場合も、リフォームの時期や場所について告知する義務が発生します。これにより、買主や借主が物件の過去の状況を正確に把握でき、後々のトラブルを避けられます。
情報開示状況
不動産のオーナーや管理会社など情報を持つ人が、その情報の開示を拒否するようなことがあれば「情報が開示されなかった」という事実を告知しなければなりません。
たとえば、死因について調査した結果「不明」であった場合や、情報提供が無回答だった場合も、その旨をそのまま伝えることが求められます。
宅建業者は、業務上知り得た情報を告知する義務があります。したがって、知っていることは、ありのまま伝えるべきです。情報の開示を拒むことなく、正確な状況を説明することが、後々のトラブルを防ぎ、取引の透明性を保つために重要です。
告知義務に違反した場合
事故物件の瑕疵を告知した場合、住んでくれる人が限られてしまう可能性はあります。しかし、告知義務を無視して事実を隠ぺいすることは非常にリスクが高いです。このような行為は「告知義務違反」となります。
最悪の場合、契約解除や損害賠償請求にまで発展することがあるため、長期的に非常に大きなトラブルを引き起こすでしょう。誠実に告知を行い、事実を明確にすることが、最終的にはリスクを避けるためには最も重要です。
告知する際に気をつけるべきポイント
実際に事故物件であることを告知する際には「口頭だけでなく書面でも行うこと」「故人および遺族のプライバシーに配慮すること」を心がけましょう。
口頭での説明だけでは「言った」「言わない」の水掛け論に発展する可能性があるため、必ず書面で同じ内容を伝えるようにしましょう。契約時には、この書面に双方が捺印し、記録として残します。書面での告知は、後々のトラブルを避けるためにも重要です。
また、事故物件は、関わった故人や遺族にとって心理的な影響が大きいことが予想されます。そのため、告知の際には、故人や遺族の名前、年齢、住所、勤務先などの個人情報を伝えることは避けなければいけません。
これらの配慮を忘れずに、買主や借主に納得してもらえる取引を行うことが大切です。事故物件の告知は慎重に行い、誠実に説明することが、後々のトラブルを避けるための最善策です。
まとめ
事故物件に関する告知義務は、売買や賃貸契約において非常に重要です。告知義務が発生するのは「自殺」「他殺」「火災による死亡」など、心理的瑕疵を引き起こす可能性のある事案に限られます。
ただし、死亡の理由や発生からの期間によって告知が必要かどうかが異なるため、慎重に対応することが求められます。
事故物件の告知義務を怠ると、後々契約解除や損害賠償請求など、大きな問題に発展する可能性があります。そのため、誠実で透明性のある対応を心掛けることは、円滑な取引を進めるためには欠かせません。
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