空き家の相続はどうするのが正解?活用法・売却法・節税術を解説
空き家の相続はどうするのが正解?活用法・売却法・節税術を解説

空き家を相続したものの、どう対応すればいいのかわからないとお悩みではないでしょうか。相続後の空き家を放置していると、固定資産税や維持費といった金銭的管理だけでなく、老朽化による近隣トラブルや資産価値の低下を招く可能性もあります。
本記事では、空き家の相続に関する基本的な知識から、具体的な活用法・売却手続き・節税対策まで実務的なポイントをわかりやすく解説します。空き家の現状と将来を見据えながら、適切な対応策を確認していきましょう。
空き家を相続するなら使い道を決めておこう丨放置するリスクとは
空き家を放置すると税金負担の増加や資産価値の低下、近隣トラブルの発生など、多方面に悪影響が及びます。こうした事態を避けるためには相続後の方針の計画を早めに決めておくことが大切です。
ここでは、空き家を放置する主なリスクを4つ紹介します。
無駄な固定資産税を支払い続けることになる
空き家をそのまま放置すると、本来支払う必要のなかった固定資産税が発生します。住宅用地の特例によって、住居がある土地の固定資産税は最大1/6に軽減されます。
しかし、空き家を適切に管理せず放置すると特例が解除されるおそれがあります。無駄な税負担を避けるには、空き家の活用や売却を早めに検討し、対策を講じる必要があります。
出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712029.pdf)
固定資産税が上がる・罰則が科せられる可能性がある
適切な管理がされていない空き家は「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定される可能性があります。これは、老朽化や衛生面の悪化、倒壊リスクなどがあると判断された場合に適用される措置です。
指定されると、住宅用地の特例が解除され、固定資産税が最大6倍に跳ね上げられる場合もあります。また、自治体からの管理改善の勧告や命令を無視すると、最大50万円以下の過料が科せられることがあります。
出典:国土交通省ウェブサイト
(https://www.mlit.go.jp/common/001090470.pdf)
出典:e-GOV「空家等対策の推進に関する特別措置法第30条」
(https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127#Mp-Ch_8)
建物の資産価値が低下する
空き家は、時間の経過とともに老朽化が進み、建物の資産価値が大きく低下する可能性が挙げられます。さらに、修繕費用やリフォーム費用が増加しやすくなり、景観や衛生環境の悪化も避けられません。
また、倒壊リスクが高まれば自治体から「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定され、売却や賃貸が難しくなります。結果的に、資産価値が大幅に低下するため、早めに空き家の適切な管理や活用の検討が欠かせません。
近隣トラブルが起こるおそれがある
長期間空き家を放置すると、近隣住民とのトラブルにつながるおそれがあります。たとえば、老朽化による建物の倒壊や瓦の落下などが発生した場合、責任問題にも発展しかねません。さらに、雑草の繁茂やごみの不法投棄、害虫・害獣の発生といった衛生面の悪化も深刻な問題です。
こうした状態は近隣住民の不安や苦情につながり、人間関係の悪化を招く要因です。空き家の適切な管理は資産保全だけでなく、地域との良好な関係を維持するためにも欠かせない取り組みといえるでしょう。
相続した空き家に資産価値がある場合の活用法
相続した空き家に一定の資産価値がある場合は、放置するのではなく積極的に活用したほうが資産保全につながります。ここでは、居住、賃貸、売却といった具体的な活用方法を紹介します。
住居にする
相続した空き家に資産価値がある場合、自宅住居として活用する方法があります。人が住まない家は傷みやすく、周辺住民への迷惑や倒壊リスクも高まるためです。
さらに、相続税対策としても有利な方法です。「小規模宅地等の特例」が適用されれば、相続税の大幅な軽減が可能です。
小規模宅地等の特例
空き家を相続して自宅として利用する場合は「小規模宅地等の特例」が適用される可能性があります。これは、相続税の課税対象となる宅地の評価額を最大80%減額できる制度です。
特例に該当した場合は、相続税負担を大幅に軽減でき、空き家を住居として活用する大きなメリットとなります。ただし、適用には一定の条件を満たす必要があるため、該当しているかの確認が必要です。
出典:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm)
賃貸として貸し出す
空き家を貸し出すのも資産価値を維持する方法のひとつです。入居者が決まれば家賃収入が得られ、固定資産税や管理費といった維持費の負担を軽減できます。
ただし、空き家の状態によっては、そのまま貸し出しても借り手が見つからないこともあります。あらかじめクリーニングやリフォームをしてから募集をかけたほうが、入居がスムーズに決まりやすく、資産価値の向上も期待できるでしょう。
また、貸し出した後も、修繕対応や入居者とのトラブル対応といった管理業務が発生する点には注意が必要です。不動産所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。
相続開始から3年以内に売却する丨空き家特例の活用
相続により取得した空き家を一定の条件を満たして売却すると「空き家特例」の活用によって、譲渡所得税の負担を軽減できる可能性があります。
この特例は、相続開始から3年以内に売却すれば、譲渡所得から最大3,000万円の控除を受けられます。
出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
相続した空き家の管理責任とは
空き家を相続した場合、その管理責任は相続人全員に等しく課されます。管理責任とは、建物や敷地を安全かつ清潔な状態に保ち、周囲に迷惑をかけないよう維持する義務のことです。
たとえば、老朽化した空き家が倒壊し、隣家や近隣住民に損害を与えた場合、相続人全員が連帯してその責任を負うことになります。十分な管理がされていないと、周辺住民との間で問題が起こり、家族や地域全体の信頼関係にひびが入りかねません。
相続人が複数人いる場合、誰が管理を担うのかを明確に決めておく必要があります。そのうえで、定期的に点検や修繕を行い、空き家を適切に管理することが求められます。
相続した空き家に資産価値がない場合はどうする?
相続した空き家に資産価値がない場合でも、放置せずに適切な対処をすることが重要です。ここでは、解体や寄付、国庫帰属制度、相続放棄など、具体的な対応策を紹介します。
建物を解体し他用途で使う
資産価値のない空き家は、解体して更地にすると、土地の活用幅が広がります。たとえば、駐車場や貸地として利用すれば、管理の手間を減らしつつ、収益を得られる可能性があります。将来的な売却もしやすくなるでしょう。
ただし、解体にはまとまった費用がかかるため事前に見積もりを取り、計画的に進める必要があります。
不動産買取業者へ売却する
空き家を早期に手放したい場合は、不動産買取業者に売却する方法があります。不動産会社に仲介を依頼して一般の買い手を探すよりも、短期間で現金化でき、管理の負担から解放される点がメリットです。資産価値が低い空き家でも、買い取ってもらえるケースは少なくありません。
ただし、一般的には市場価格を下回る価格での取引となるケースが多く見られます。価格は気にせず、とにかく早く手放したいと考えている方に適した方法です。
自治体へ寄付する
資産価値が低い空き家の処分方法のひとつに、自治体への寄付が挙げられます。地域によっては、公共施設用地や防災用地として受け入れられるケースがあります。
ただし、すべての自治体が寄付を受けているわけではなく、受け入れには厳しい条件があります。希望する際は、早めに自治体へ相談・確認してみましょう。
相続土地国庫帰属制度を活用する
相続した土地を国が引き取る「相続土地国庫帰属制度」は、資産価値の低い空き家に対処する有効な手段のひとつです。2023年4月27日に施行された比較的新しい制度であり、活用により空き家の管理や固定資産税の負担から解放される可能性があります。
ただし、制度を利用するには厳格な要件が設けられており、手続きも煩雑です。事前に制度内容を確認し、準備を進めることが大切です。
出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html#mokuji1)
相続放棄をする
空き家を相続したくない場合、相続放棄を検討する方法もあります。相続を放棄すれば、空き家の管理や税金の負担からは解放されますが、いくつかの注意点があるため確認しておきましょう。
相続放棄をしても空き家の管理責任は残る可能性がある
相続放棄をしても自身が使用していたり、実際に管理したりしている空き家は、引き続き管理責任を負うことになります。
2023年4月1日施行の民法改正により、相続放棄後の管理義務は「現に使用・管理している財産」に限定されました。ただし、新たな所有者に引き渡しが完了した場合には、その後の管理義務は発生しません。
参考:e-GOV「民法940条」
(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
相続放棄をするとほかの財産も放棄することになる
相続放棄とは、空き家だけでなくすべての相続財産を放棄する手続きです。そのため、現金や有価証券、不動産など価値のある財産の場合も手放すことになります。
空き家のリスクを避けたいという理由だけで安易に相続放棄を決めてしまうと損をすることもあります。マイナス面とプラス面の両方を見極めたうえで判断しましょう。
空き家の相続には相続登記が必要
空き家を相続した場合、不動産の名義を相続人に変更する「相続登記」の手続きが必要です。
相続登記しないまま放置すると、将来の売却や活用が難しくなるおそれがあります。さらに、2024年4月1日からは、相続人が不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記をすることが法律で義務付けられました。
怠ると過料が科される可能性があるため、早めの対応が大切です。ここでは、相続登記の流れや必要書類、費用について解説します。
出典:法務省ウェブサイト
(https://www.moj.go.jp/MINJI/souzokutouki-gimuka/index.html)
相続登記の流れ
まず、被相続人の死亡を証明する戸籍謄本を取得し、相続人を特定します。続いて、遺言書や遺産分割協議書など、相続内容を示す書類を用意します。
必要書類がそろったら登記申請書を作成し、法務局へ提出します。申請後、審査が行われ、問題がなければ名義変更が完了します。相続人が複数いる場合は、財産をどのように分けるか事前に話し合う必要があるため、早めに準備しましょう。
参考:法務省民事局「不動産に関するルールが大きく変わります」
(https://www.moj.go.jp/content/001381141.pdf)
相続登記に必要な書類
相続登記に必要な書類は、相続方法によって異なります。
- 遺産分割協議を行う場合:協議書と相続人全員の印鑑証明書
- 遺言がある場合:遺言書と(自筆証書・秘密証書遺言の場合は検認済証明書も必要)
- 法定相続分で登記する場合:相続人全員の戸籍謄本や住民票など
このほか、共通して必要となるのが、被相続人・相続人それぞれの戸籍謄本や印鑑証明、不動産の固定資産評価証明書などです。事前にリストを確認し、早めに準備しておきましょう。
出典:法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」
(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001393744.pdf)
相続登記にかかる費用
相続登記では、以下の費用が発生します。
- 登録免許税:固定資産税評価額の0.4%
- 書類取得費用:戸籍謄本や住民票の取得費用
司法書士に申請を依頼した場合は、司法書士報酬を支払う必要があります。司法書士報酬は物件数や難易度によりますが、数万円から十数万円程度が一般的です。事前に見積もりを取っておくとスムーズに進められます。
空き家特例を活用して節税しよう
相続した空き家を売却する際、一定の条件を満たせば「空き家特例」が適用され、譲渡所得から最大3,000万円の控除を受けられます。ここでは、税制改正による主な変更点や特例適用の手続き・必要書類について解説します。
空き家特例の要件
適用にはいくつかの要件を満たす必要があります。まず、被相続人が亡くなる直前まで一人でその家屋に居住していたことが条件です。
家屋は1981年5月31日以前に建築されたものであり、耐震基準を満たしているか、または売却前に取り壊されている必要があります。
さらに、相続開始から3年目の年の12月31日までに売却すること、売却価格が1億円以下であることも求められます。加えて、相続人が相続後にその家屋を居住用や賃貸用に使用していないことが必要です。
これらの要件をすべて満たした場合に限り、特例の適用が認められます。
参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
令和5年の税制改正による変更
空き家特例は、2023年(令和5年)に施行された税制改正によって大きく変更されました。ここでは、主な変更点を解説します。
出典:国税庁ウェブサイト
(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-004.pdf)
期限の延長
もともと空き家特例の適用期限は、2023年12月31日までの特例措置でした。しかし、税制改正後、2027年(令和9年)12月31日まで適用期限が延長されました。
空き家問題が深刻化するなかで、期限の延長により多くの人が申請しやすくなっています。
耐震リフォーム・除却要件の緩和
従来は、売却前に耐震リフォームや建物を取り壊して更地にする除却が必要でした。改正後は、2024年1月1日以降の譲渡であれば買主が売却後に耐震改修や除却を買主が行う場合でも特例の適用が可能となりました。
参考:国土交通省「特例措置の概要」
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html)
空き家特例適用の方法と必要書類
空き家特例を受けるには、確定申告で正しく手続きをする必要があります。ここでは、適用方法と必要書類を解説します。
空き家特例は確定申告を通じて適用される
空き家特例を適用するには、譲渡した翌年の確定申告期間内(通常は2月16日から3月15日)に、所轄の税務署へ申告書と必要書類を提出します。申告書には特例を適用する旨を明記します。
申告が遅れると特例が受けられないため、期日内に申告することが大切です。
空き家特例の必要書類
空き家特例の申告をする際に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書の写し
- 登記事項証明書
- 被相続人住居家屋等確認書(市区町村)
このほか、売却する家屋を取り壊さずに譲渡する場合は、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書が必要になります。
状況に応じて、被相続人の戸籍謄本など追加の書類が求められることもあるため、事前に確認しておきましょう。
参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
売却が難しい場合は相続土地国庫帰属制度の利用検討を
相続した土地の売却が難しい場合「相続土地国庫帰属制度」の活用を検討する方法があります。この制度は2023年4月に開始されたもので、一定の条件を満たす土地は国が引き取ってくれる仕組みです。ここでは、制度の概要や利用条件、手続きの流れについて解説します。
出典:法務省民事局「不動産に関するルールが大きく変わります」
(https://www.moj.go.jp/content/001381141.pdf)
相続土地国庫帰属制度の要件
相続土地国庫帰属制度は、すべての空き家や土地に適用されるわけではありません。利用するには「土地に建物が存在しない」「境界が明確である」「担保権が設定されていない」などの条件を満たす必要があります。
さらに、管理が適切で、著しい土壌汚染や災害リスクがないことも条件のひとつです。
申請できない・承認されないケースも多い
相続土地国庫帰属制度には、申請できないケースや、申請しても承認されないケースがあります。これらのケースについて具体的に見ていきましょう。
出典:法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」
(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00461.html)
申請できないケース
以下のような土地は、申請できません。
- 建物が残っている土地
- 担保権の付いた土地
- 隣接地との境界が不明確な土地
- 墓地や通路、水道用地など特定の用途に使われている土地
所有権の移転にともなうリスクが高い、または公共性の高い利用がなされているため、制度の適用が認められていません。
承認されないケース
申請しても、以下のような理由で承認されないケースもあります。
- 災害リスクが高い土地
- 管理不十分で再利用困難な土地
- 環境に悪影響を及ぼす土壌汚染がある土地など
これらの土地は、将来的なトラブルやコスト増加の可能性があるため、承認されにくくなっています。
相続土地国庫帰属制度の手続き方法
まず、土地の所在地を管轄する法務局(本局)で、申請の可否や必要書類について事前相談したのち、承認申請書と必要書類を作成し、法務局(本局)に提出します。
法務担当官により、書面や現地調査が行われ、要件に該当すると認められれば法務大臣・管轄法務局長による承認が下ります。
通知を受けてから30日以内に負担金を納付することで、土地の所有権が国に移転します。負担金は基本的に20万円かかるため、余裕をもって準備することが大切です。
出典:法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内」
(https://www.moj.go.jp/content/001417248.pdf)
手続きが難しい場合は専門家へ相談を
相続土地国庫帰属制度の手続きはやや複雑で、専門的な知識が求められます。条件の見落としや書類の不備があると、申請が受理されない可能性もあります。
不安な場合は、司法書士や弁護士、行政書士などの専門家に相談するとスムーズです。
まとめ
空き家を相続したものの、活用方法がわからず手つかずのままにしている方も少なくありません。しかし、空き家を放置すると、固定資産税の負担が増すだけでなく、近隣トラブルや資産価値の下落といったリスクを招くおそれがあります。
相続後は早めに、賃貸や売却、相続土地国庫帰属制度など、状況に応じた対応策を検討するのが大切です。
アウトレット不動産では、空き家の査定から売却まで、専門家が一貫してサポートしています。幅広い物件に対応しているため、安心してお任せいただけます。売却を検討している方や空き家の悩みを抱えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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