空き家の放置で固定資産税が6倍に?条件・対策方法・税の仕組みを解説
空き家の放置で固定資産税が6倍に?条件・対策方法・税の仕組みを解説

「親の住んでいた実家を相続したけれど、遠方に住んでいて管理が難しい」このような状況に直面する方は少なくありません。
しかし、空き家を放置すると、固定資産税の増加や建物の老朽化だけでなく、近隣住民とのトラブルや行政指導の対象になるリスクも発生します。
この記事では、空き家にかかる税金の基本、特定空き家や管理不全空き家に指定された場合の影響を詳しく解説します。空き家の活用・処分方法も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
空き家にかかる税金丨固定資産税と都市計画税
空き家を所有すると、維持管理の手間だけでなく「固定資産税」と「都市計画税」の納付義務が発生します。これらの税金は空き家だけでなく、土地や建物といった不動産を所有する人すべてに対して毎年課される地方税です。
まず、固定資産税は、不動産の課税標準額に対して1.4%を乗じて計算しますが、税率は自治体によって異なる可能性もあります。
一方、都市計画税は、課税標準額に対して最大0.3%の税率で課税されます。市街化区域内にある空き家の土地と建物に対して課されるのは、固定資産税と都市計画税の両方です。
たとえば、市街化区域内にある課税評価額1,000万円の土地を所有している場合、固定資産税は14万円(1,000万円×1.4%)、都市計画税は3万円(1,000万円×0.3%)となり、合計で年間17万円の税負担となります。空き家であっても税金が発生するため、事前に納税額を把握しておくと安心です。
参考:総務省「都市計画税」
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_16.html)
参考:総務省「固定資産税」
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_16.html)
「住宅用地の特例」による軽減措置
空き家を含む住宅用地には、「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税と都市計画税の負担を大幅に軽減できます。特例により、住宅がある土地の課税評価額が大幅に減額される制度で、空き家も条件を満たせば対象になります。
住宅用地は「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」の2種類に分類され、それぞれ軽減率が異なります。小規模住宅用地とは、住宅の敷地のうち200㎡以下の部分を指し、固定資産税の課税標準額は6分の1、都市計画税評価額は3分の1に減額されます。対して、200㎡を超える部分である一般住宅用地は、固定資産税が3分の1、都市計画税が3分の2です。
たとえば、評価額が1,000万円の小規模住宅用地の場合、固定資産税は「1,000万円×1/6×1.4%=約2万3,333円」都市計画税は「1,000万円×1/3×0.3%=約1万円」となり、大幅に軽減されます。
出典:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712029.pdf)
出典:国土交通省「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712030.pdf)
納税する人
固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で土地や建物などの不動産登記簿に所有者として登録されている個人または法人です。
空き家の所有者が亡くなった場合、固定資産税の納付義務は相続人に引き継がれます。たとえ死亡日が1月2日以降でも、当該年度の支払い義務は消滅しません。複数の相続人がいる場合、代表者が一時的に税金を立て替え、遺産分割に応じて清算するケースが一般的です。
納税の期限
固定資産税は原則として年4回に分けて納付しますが、各期の納期限は自治体ごとに異なります。
たとえば、東京都では第1期が6月から始まり、9月・12月・2月のスケジュールで納付します。一方、大阪市は4月スタートで7月・12月・2月の4期制です。
通常、納税通知書は4月から6月にかけて、不動産の所在地を管轄する市区町村から発送されます。納税通知書には期別の納付書が同封されており、希望すれば1年分をまとめて納付することも可能です。
とくに、相続により遠方に空き家を所有している場合は納付漏れを防ぐためにも、早めにスケジュールを確認しておきましょう。
出典:東京都主税局「固定資産税・都市計画税」
(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi)
出典:大阪市ウェブサイト「大阪市税の納期限等」
(https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000006938.html)
税金を滞納した場合のリスク
地方税を滞納すると、延滞金の発生や財産の差し押さえといった厳しい措置を受ける可能性があります。
まず、納付期限を過ぎると、市町村から督促状が届きます。それでも支払いがない場合、自治体は預金や給与、不動産などを調査し、差し押さえに踏み切ることがあります。地方税法では「督促状の発付後10日以内に完納がない場合、財産の差し押さえが可能」と定められており、放置は大きなリスクとなります。
納付の遅れには「延滞金」も加算されます。たとえば、納付期限の翌日から1か月以内の延滞は年2.4%、それを超えると年8.7%の利率が適用され、時間が経つほど負担は重くなります。
ただし、すぐに差し押さえにいたるわけではありません。自治体によっては、分割納付や支払猶予の相談に応じてくれることもあります。支払いが難しいときは放置せず、早めに市区町村の納税窓口へ相談しましょう。
出典:e-GOV「地方税法」
(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226#Mp-Ch_3-Se_2)
出典:総務省「加算金、延滞金、還付加算金」
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_30.html)
空き家は更地にしない方が節税になる
空き家は管理が大変でも、建物を残したままの方が固定資産税の負担を軽くできる場合があります。
住宅がある土地には「住宅用地の特例措置」が適用され、固定資産税が最大6分の1に軽減されるためです。
一方、空き家を取り崩して更地にしてしまうと特例が使えなくなり、税金が増えてしまう可能性があります。たとえば、課税評価額が3,000万円の土地では、建物がある状態なら約7万円で済むところ、更地にすると約42万円に増えるケースもあります。
空き家を放置すると固定資産税が6倍になる場合がある
空き家を長期間放置していると、自治体から「特定空家」に指定され、固定資産税が最大6倍、都市計画税も3倍に増額される可能性があります。
管理されていない空き家は、地域の安全や衛生に悪影響を与えるおそれがあるため、税制上のペナルティが設けられています。
特定空家とは
特定空家は、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」にもとづいて導入された制度です。
この制度の目的は、老朽化による倒壊や火災、ごみの不法投棄など、空き家がもたらす危険や環境悪化から地域を守ることにあります。
また、空き家の有効活用を進めるため、国が基本的な指針を示し、各自治体が地域の実情に沿って施策を展開できる仕組みです。
制度が生まれた背景には、全国的に深刻化する空き家の増加があります。総務省の調査によれば、2023年10月1日時点で、国内の空き家の数は過去最多の約900万2,000戸に達し、空き家率も13.8%と過去最高を記録しました。少子高齢化や人口の都市集中が進む中で、管理されないまま放置される住宅が増加しており、地域の安全や景観、住環境に大きな影響を与えているのが実情です。
空き家を単なる私有資産ではなく、地域全体の課題として据え、法的に管理と活用を促す仕組みが構築されました。
出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」
(https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf)
特定空家の対象
特定空家の対象となるのは、以下のような状態にある建物です。
- 建物の老朽化が著しく倒壊のおそれがある
- 不衛生な状態が続き、周囲に悪影響を及ぼしている
- 景観を著しく損ね、地域社会の生活環境を害している
単に長期間使われていないというだけでなく、地域に明確な悪影響を及ぼすと判断された場合に、特定空家として認定されます。
特定空家認定の流れ
特定空家認定の流れは、以下の手順で進みます。
- 調査・認定
- 助言・指導
- 勧告
- 命令
- 行政代執行
まず、自治体が現地調査を実施し、老朽化や倒壊のおそれ、不衛生な状態が確認されると「特定空家」または「管理不全空家」に認定されます。認定後、所有者には適切な管理を促すための「指導」や「助言」が行われ、対応によっては特定空家の指定が解除される場合もあります。
しかし、何の対応もせずに放置すれば、次に待っているのは「勧告」です。勧告を受けると、住宅用地に適用されていた固定資産税の軽減措置が打ち切られ、税額が最大で6倍(都市計画税は3倍)に増額されます。
さらに改善が見られない場合、次に出される措置は「命令」です。最終的には「行政代執行」となり、自治体が所有者に代わって建物を解体、費用を請求することになります。
このように、特定空家に関する行政措置は段階的に厳しくなります。固定資産税の増加だけでなく、過料や解体費などの負担も生じます。
出典:国土交通省「空家等対策特別措置法について」
(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001385948.pdf)
固定資産税が増額されるタイミング
固定資産税が増額されるかどうかは「毎年1月1日時点」での空き家の状態にもとづいて判断されます。
たとえば、年の途中で特定空家に認定されても、その年の固定資産税額には反映されません。固定資産税と都市計画税は、1月1日時点の状態を基準として課税されるためです。年内に適切な管理をし、特定空家の認定を解除できれば、翌年度の税優遇は維持されます。
一方、改善が1月2日以降にずれ込んだ場合は、軽減措置の適用が受けられなくなります。税負担の増加を防ぐには、基準日である1月1日までに対処を終えましょう。
法改正で「管理不全空家」も減税の対象外になる
2023年の法改正により、管理が不十分な空き家も住宅用地特例の対象から除外されました。これにより、従来は「特定空家」に限られていた税優遇の撤廃リスクが、より多くの空き家に広がることになります。
改正の目的は、放置が深刻化する前の段階で、所有者に早期の対応を促すことです。「管理不全空家」という新たな区分が設けられたことで、行政は空き家の実情に応じた柔軟な措置を取りやすくなります。空き家対策の効果が高まると期待されています。
特定空家と管理不全空家の違い
特定空家と管理不全空家は、いずれも管理不備のある住宅を指しますが、劣化の深刻度に違いがあります。
- 特定空家:倒壊のおそれや衛生・景観への悪影響がすでに顕在化している状態
- 管理不全空家:まだ深刻な被害にはいたっていないものの、放置すれば特定空家に進行しかねない段階
管理不全空家は、いわば「特定空家の一歩手前」に位置づけられる状態であり、早期の対応が求められます。具体例としては、以下のような状態が該当します。
- 外壁の一部が剥がれている
- 庭木が隣地に越境している
- 郵便受けにチラシや郵便物が溢れている
こうした軽度の劣化や放置の兆候が見られる場合、行政から管理不全空家と判断される可能性があります。
特定空家・管理不全空家の指定を避ける方法
空き家を放置していると「管理不全空家」や「特定空家」に指定され、固定資産税の増額や行政指導の対象となる可能性があります。ここでは、特定空家や管理不全空家に指定されないための具体的な対策を紹介します。
行政の指示に従い改善する
行政からの助言や指導があった場合は、できるだけ早く対応することが大切です。たとえ劣化が軽微であっても、改善の意志を示し、実際に管理を始めることで、管理不全空家や特定空家の指定を回避できる可能性が高まります。
とくに、注意したいのが固定定資産税の評価基準日が毎年1月1日である点です。たとえ年の途中で改善しても、1月2日以降の対応では税負担が反映されず、住宅用地の特例が適用されないおそれがあります。
継続的に管理する
空き家の劣化や放置状態を防ぐには、一時的な修繕だけでなく継続的な管理が不可欠です。一度外壁を修繕したり、庭の草木を整えたりしても、その後の管理を怠れば再び劣化が進行し、結果として指定対象になる可能性があります。
建物の定期的な点検や清掃、庭木の剪定、不法投棄の防止など、日常的なメンテナンスを継続的にしましょう。
空き家の活用・処分の方法
空き家の活用や処分方法は多岐にわたります。いずれの方法にもメリット・デメリットがあるため、自身の状況や目的に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。
空き家のまま有効活用する
空き家を活用する方法としては、自分や家族が住む、または賃貸として貸し出すといった選択肢があります。
自ら住む場合は、快適に暮らせるようリフォームでの対応が必要です。しかし、住宅用地の特例が適用され、固定資産税の軽減を受けられます。一方、賃貸に出して入居者が決まれば家賃収入を得られるうえ、不動産の評価額が下がるため相続税や贈与税の節税にもつながります。
ただし、建物の老朽化が進んでいる場合は、貸し出す前に修繕が必要です。自治体によっては修繕費の一部を補助する制度もありますが、すべてが補償されるわけではありません。修繕費用をかけてでも賃貸経営を始める明確な意思がある場合に、適した選択肢といえます。
解体してほかの用途で使う
空き家を解体して更地にすれば建物の管理が不要になり、土地の活用方法も広がります。たとえば、駐車場や資材置き場として貸し出せば、立地によっては安定した収益が見込めます。
更地にすることで買い手からの需要も高まり、売却がスムーズに進むケースも少なくありません。加えて、建物にかかっていた固定資産税や都市計画税は不要になる点も、コスト面でのメリットです。
ただし、建物を解体すると住宅用地の特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が高くなる場合があります。また、解体にはまとまった費用が必要です。自治体によっては、老朽化した空き家の解体を対象とした解体費用の補助制度を設けている場合があるため、事前に確認しておくと安心です。
売却する
空き家を早めに売却すれば、今後発生する固定資産税や都市計画税の負担を避けられます。また、特定空家に指定されるリスクを回避できる点も大きなメリットです。老朽化が進んでいる場合でも、勧告を受ける前に売却すれば、管理コストを抑えつつ資産を現金化できます。
ただし、売却益が出た場合は「譲渡所得税」が課税される点に注意が必要です。相続によって取得した空き家を売却する場合は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が適用され、条件を満たせば、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm)
固定資産税・都市計画税は日割り計算になる
売却時の固定資産税や都市計画税は、所有期間に応じて日割り計算をするのが一般的です。これらの税金は毎年1月1日時点での所有者に対して、1年分が課されます。
そのため、年度の途中で売却しても、税の納付義務は原則として売主にあります。ただし、売却後の期間についても売主が全額負担するのは不公平です。実務では引き渡し日を基準に、売主と買主の間で日割り精算するケースが広く用いられています。
この清算方法は、法律で定められているものではなく、あくまで当事者間の合意にもとづく取り決めです。売買契約書の内容をよく確認し、事前に取り決めておくことが大切です。
空き家特例の適用で控除を受けられる可能性も
空き家を売却する際、一定の条件を満たせば「マイホームを売ったときの特例」が適用される可能性があります。適用できれば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できるため、譲渡所得税や住民税の負担を大幅に軽減できます。
この特例を受けるには、以下のような要件をクリアしなくてはいけません。
- 被相続人が一人で住んでいた家であること
- 相続開始後3年以内に売却すること
- 親や子など特別な関係のある人に売却しないこと
- 過去3年以内に同じ特例を使っていないこと
- 特例の適用を目的として住んだ家でないこと など
所有期間が10年を超えていれば「軽減税率の特例」との併用も可能です。両方適用されると、節税効果がより高くなります。
ただし、特例を利用した場合、前後2年間は住宅ローン控除が使えなくなるため、将来マイホームの買い替えを検討している方は事前に確認が必要です。
出典:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)
出典:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)
相続土地国庫帰属制度を利用する
相続や遺贈で土地を取得したものの、自身で利用する予定がなく、売却も難しい場合は「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討してみましょう。
この制度では、一定の条件を満たせば土地を国に引き取ってもらうことが可能です。ただし、以下のような土地は国庫帰属が認められません。
- 建物が残っている土地
- 担保権や地上権などが設定されている土地
- 土壌汚染がある土地
- 境界が不明確、または所有権を巡って争いのある土地
- 通路などが含まれる土地 など
また、制度を利用するには、土地1筆あたり14,000円の審査手数料がかかります。さらに、国への引き取りが認められた場合は、「標準的な10年分の管理費用」にもとづいて算出された金額を負担金として支払う必要があります。
出典:法務省「相続土地国庫帰属制度」
(https://www.moj.go.jp/content/001390195.pdf)
まとめ
空き家の管理が行き届かず「特定空家」に指定されると、住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍に増える可能性があります。
たとえ誰も住んでいなくても、空き家を所有しているかぎり、税金や管理といった負担は避けられません。そのまま放置するのではなく、状況に応じた対策を早めに検討することで税負担を抑え、空き家を資産として活かす道が見えてきます。
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