日本には新築の家に入居したり、賃貸住宅へ引っ越しをしたりする際に、お祓いやお清めをする風習があります。
これは日本人が古くから、神羅万象すべての物に八百万の神が宿ると考え、信仰していた背景が影響しています。これから住む土地の神様、家の神様に挨拶するとともに新生活を祈願する儀式です。

しかし、ひとえに家のお祓いといっても、家の完成を祝う、平穏に暮らすことを願うという意味だけではありません。状況によっては、死者を弔う、供養するという意味を持つこともあります。
お祓いの意味や費用、タイミング、必要なものなどを新築物件、中古物件、事故物件に分けて詳しく紹介します。

お祓いにかかる料金やタイミング

お祓いとは、けがれや厄災などの不浄を取り除くためにおこなわれる神道の宗教的な行為です。新築や賃貸などの新居へ引っ越しをした際のお祓いは家祓いといい、邪気を祓うとともに、家族の健康や安全を願うという意味があります。
中古物件、特に事故物件の場合は、祈願だけでなく以前住んでいた人の気や邪気を祓う意味を持ちます。

ではそれぞれの違いについて、詳しくみていきましょう。

新築物件の場合

新築一戸建て住宅は建築する際、工事の安全や、建物が無事完成することを願って、地鎮祭、上棟式、竣工式がおこなわれます。

実施することが慣習となっている地域もありますが、最近では費用や準備に時間がかかることから、地鎮祭だけ実施して上棟式はしないなど、儀式を簡略化する傾向にあります。
ハウスメーカーの意向や土地柄が大きく影響されるため、場合によってはすでに建設費に含まれている場合もあります。詳しいことはハウスメーカーの担当者に相談しましょう。

料金

儀式をおこなうには神主さんへの礼金が必要です。玉串料や初穂料などと呼ばれ、20,000~50,000円を包んでお渡しします。また、儀式に使うお神酒などのお供え物を誰が準備するかも事前に確認しておきましょう。
また祝宴する人もおり開く場合は、宴会に必要な料理・お酒などは施主側で用意します。そのほか、工事関係者にご祝儀を渡す場合は、棟梁には15,000~20,000円程度、ほかの職人さんたちには5,000円が目安といわれています。

しかし、金額や渡す人数、タイミングについては勝手に判断せず、あらかじめ棟梁に相談することが大切です。

タイミング

地鎮祭とは、土地の神様である氏神様に土地を使用する許しを請い、工事の安全を祈願する儀式のことで工事着工前におこないます。一般的に建築吉日と言われているのは、六曜の大安・先勝・友引の午前中です。

上棟式とは、工事が順調に進んでいることに感謝し、無事完成することを祈るもので、建物の骨組みが完成した時点でおこなう儀式です。
工事に携わった大工さんや職人さんを労うもので、地域によっては、もちや金銭をまく風習が根付いている地域もあります。

竣工式とは、建築物の完成を祝い、今後の安全と繁栄を祈る儀式で建物が完成した際におこないます。儀式をどこまでおこなうかは、地域やハウスメーカーによって異なるため、家づくりを始める前に確認しておきましょう。

中古物件の場合

中古物件の場合、建てられた際にお祓いがおこなわれているはずですが、ハウスメーカーによってはおこなっていない場合もあります。また、実際にお祓いされたかを把握していない可能性も高く、どこかすっきりしないと感じる人もいるでしょう。
これから長く暮らしていく家に前に、以前住んでいた人の気が残っているかもしれない、と意識してしまうと居心地悪く感じるかもしれません。

あくまで気持ち的な問題であっても、心地よく新生活をスタートさせるため、自分たちが暮らす前に改めてお祓いをする人が増えています。

料金

お祓いは神主に執りおこなってもらうため、新築物件と同様に20,000~50,000円程度の礼金が必要です。近所の神社に問い合わせてみたり、インターネットで調べたりすることもできますが、
不動産会社に紹介してもらえることもあるので一度相談してみましょう。

お祓いに必要なお供え物は、神社側が準備してくれる場合もありますが、自分で準備しなければならない場合もあるため前もって確認しておきましょう。

タイミング

家の中にある古い気を祓うという目的を考えると、入居前に済ませておくと心地よく新生活を始めることができます。
しかし忙しくて時間が取れなかったり、お祓いをしないで入居した後に気になることがあったりした場合、入居後にお祓いしてもよいでしょう。

引っ越しシーズンや行事と被る場合は、神社の予約が埋まっていることも考えられるため早めの問い合わせが大切です。

事故物件の場合

賃貸物件を所有している人の中には、所有している物件が事故物件となってしまうケースもあるでしょう。この場合、お祓いをすることで買い手が付きやすくなる場合があります。
なかには、お祓いが済んでいなくても買い取ってくれる、訳あり物件買取専門業者もいます。無料査定を利用して、買取価格や事故物件に関する悩みを相談してみるとよいでしょう。

料金

お祓いの料金は、事故物件で起きた死因によって変わるのが一般的です。住人が病気による自然死や孤独死の場合、準備や手間が最低限で済むため費用も比較的安いです。
逆に、死者が複数いる場合や無念の思いが強い場合などは、祭壇が大きくなりお供え物の量も多くなるため時間と費用がかかります。

さらに、一戸建て住宅での事故や範囲の広い火事が起きた物件などは、部屋のお祓いだけでなく、建物全体をお祓いしなければならない場合もあります。
部屋の数・家の大きさ・建物や土地の範囲順に、お祓いにかかる時間や料金が増えると覚えておきましょう。

タイミング

事故物件のお祓いに決まったタイミングはありません。主に、特殊清掃業者が入るときやリフォーム後にお祓いをおこなうことが多いです。

ところによっては、売買契約の直前にお祓いし、清められたばかりの状態で売却するところもあります。またお祓いをしたときは、写真などを残しておくと売却するときに証明となるため記録して損はないです。

お祓いをする方法

お祓いの方法は新築物件、中古物件、事故物件で異なるだけでなく、地域によっても差がでます。インターネットで調べることもできますが、まずは知識のある専門家に相談するとよいでしょう。

神社や寺に依頼する

神社の場合、普段から不動産関連のお祓いをおこなっているところが多くあるため、近くの神社でできる可能性があります。料金も明確に設定されている場合もあるため、一度問い合わせてみましょう。
寺に依頼する場合、先祖代々のお墓がある菩提寺に相談するとよいでしょう。相談した寺がお祓いを受け付けていなくても、別の寺を紹介してもらえる可能性もあります。神社も寺も予約が必要なため早めに問い合わせするようにしましょう。

管理会社に依頼する

新築物件の場合、ハウスメーカーが取り仕切ってくれる場合もあります。神主さんの手配を代わりにしてくれるほか、お祓いに必要なお供え物などが建設費用に含まれていることもあるため事前に確認しておきましょう。
また着工前には、ハウスメーカーの担当者が周辺に挨拶してくれるのが一般的です。同行したい場合は前もって相談しておきましょう。

自分でする

なかには、あくまで気持ちの問題だからと、自分で簡易的にお祓いをおこなう人もいます。やり方はいたって簡単で、お清めに効果があるといわれている塩を小皿に盛って、家の中に置いて場を浄化します。
また、清酒にもお清めの効果があると言われているため、しっかりお清めしたい場合は、清酒を塩が湿る程度に振りかけるとより効果が高まるでしょう。

必要なものはスーパーなどで簡単に手に入るため、安価に済ませられます。場所によっては、神社で盛り塩専用の塩が販売されていることもあるので、気になる人は購入してみてもよいでしょう。

お祓いをする際の服装と持ち物

人生で家のお祓いに立ち会う機会はそう多くないはずです。しかし、お祓いには祈願や弔いなどの意味があるため、儀式に相応しい服装や持ち物を知る必要があります。
今回は、新築・中古物件と事故物件に分けて紹介します。

新築・中古物件の場合

お祓いに参加するのは、施主の家族とハウスメーカーの関係者です。新築物件の儀式によっては、大工さんや職人さんが参加することもあるほか、記念すべき日になるため同居しない両親などを呼ぶ人もいます。

服装

大規模な建物の場合は、スーツなどのフォーマルな服装が選ばれます。しかし、新築の一戸建てや中古物件の場合は、アットホームな儀式になることが多いため、普段着でも問題ありません。
所要時間は30分程度と、そこまで長いものではありませんが、お祓いは外でおこなうため季節に合わせた格好がよいでしょう。

しかし、ハウスメーカーの方はスーツ、現場責任者は作業服で参加するケースが多いうえ、催し事をやっていると近所の方と挨拶することも考えられるため、気になる人は綺麗な服装を選ぶことをおすすめします。

持ち物

まずひとつめは、神主さんへの礼金です。表書きは初穂料または玉串料と記載し、のし袋に包んで支払います。

そして儀式に必要なお供え物は、神社やハウスメーカーが準備してくれることもありますが、自分で準備する場合は用意するものが多いため、早めに手配しておくとよいでしょう。
お供え物で準備するものは、日本酒1升、塩1合、米1合、山の幸、海の幸、野菜、果物が一般的です。魚は祝い事によく使用される尾頭付きの鯛が多いですが、準備が難しい場合は尾頭付きの魚であれば代用可能です。

野菜や果物はそれぞれ3~5種類必要で、旬のものや地域の特産品を準備するとよいでしょう。
また、地域によってお祓い後に近所への挨拶回りをすることも多く、場合によっては近所の方へ渡す粗品を準備する必要があります。基本的に挨拶回りはハウスメーカーの担当者が同行するため、粗品を準備するべきか確認しておきましょう。

事故物件の場合

物件で事故が発生したからといって、かならずお祓いをしなければならないという決まりはありません。
そのためお祓いをすると決めた場合、物件所有者は出席しなければいけないほか、お祓いに伴う費用は原則物件を所有しているオーナーが負担することになります。

また供養というと、仏教やキリスト教などの宗派を気にする方もいらっしゃるかもしれませんが、お祓いにあたっては葬儀と違って基本的に宗派を気にする必要がないとされています。

服装

事故物件のお祓いは、故人を弔う目的があるため服装は喪服が好ましいです。喪服の準備ができない場合、男性はダークトーンの服を選び、ジャケットに無地のズボン、革靴が無難です。
女性の場合は、ダークトーンのワンピースまたは襟付きのトップスにスカートやパンツを合わせるのが無難でしょう。

男女ともに派手な色のネクタイやアクセサリーは、場にふさわしくないため禁物です。

持ち物

新築・中古物件と同じく、礼金とお供え物が必要です。事故物件の場合、状況により新築・中古物件よりも準備するものが多くなるため、
寺や神社に準備してもらうケースがほとんどです。その分費用は掛かりますが、手間を考えると頼んだ方がよいでしょう。

また、事前に撮影してよいかを神社やお寺に確認のうえ、カメラを準備することをおすすめします。

事故物件のお祓いに関する注意点

事故物件のお祓いは、新築・中古物件とは違いが多数あります。一番の違いは事故物件の場合、事故があった旨を告知する義務があることです。告知義務を故意過失問わず怠ると、多額の損害倍書を請求される可能性があるため注意が必要です。
そのため、事故物件のお祓いに関してはいくつか注意点があり、しっかりと理解しておく必要があります。

お祓いをしたことの証明が難しい

事故が発生した物件をお祓いしたとしても、見た目に変化はないためお祓いをした事実を証明することは難しいです。
しかしながら、事故物件を新たに賃貸したり売却したりする場合、気にする人は多いため賃借人や買主からお祓いをした証明を求められることはあります。

購買層を増やすためにもお祓いをした際に、写真や動画を記録として残しておくとよいです。寺や神社次第では、お祓い証明書というものを発行してもらえる場合があるため、証明として欲しい方は事前に確認しておきましょう。

必ずしもお祓いをする必要はない

事故物件のお祓いは法的な義務があるわけでもないため、お祓いをするかどうかは自由に選べます。費用も自己負担となると悩まれる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、家を建てる際に地鎮祭などが習慣となっているように、お祓いや祈祷を重要視している人は少なくありません。所有者は気にしていなくても、買主や借主は気にする場合もあるため、お祓いはなるべくおこなったほうがよいでしょう。

買主や借主のことを考えるならしたほうがよい

一般の賃貸物件でも、隣が墓地だと縁起が悪いと嫌厭されやすい傾向にあります。事故物件ともなると、これから賃貸への入居や物件の購入を希望している人の精神的な部分に、影響を与える可能性は高いといえます。
義務がないとはいえ、少しでも精神的な不安を軽減し、安心してもらえるようにお祓いをする人は多い傾向にあります。お祓いは、買主や次の借主の心情を考慮する行為と言ってよいでしょう。

お祓い後も告知義務はなくならない

最初にお伝えした通り、事故が発生した物件を売却したり新たに賃貸借したりする場合は、事故があった事実を賃借人や買主に告知する義務があります。
賃貸では起きた日から3年、売買では無制限と決められており、仮に物件のお祓いをしたとしてもこの告知義務が消滅するわけではありません。

つまり、お祓いをしようがしまいが、事故物件である事実は変わらないということです。費用もオーナー持ちであるうえ、時間も要することも頭に入れお祓いの依頼を考えましょう。

お祓いをしても売却できる保証はない

お祓いは目に見えて効果が発揮されるものではないため、お祓いをしたとしても売却できる保証はありません。
あくまで心理的緩和が目的であり、事故物件であることに変わらないため、売却後に買主とトラブルになるケースや現状のままでは売れないと判断し、解体や大掛かりなリフォームに踏み切る人もいます。

売却するなら、訳あり物件を専門に買い取る業者を探すことをおすすめします。お祓いが不要なうえ、現況のまま買取ってくれるため余計な費用が掛かりません。また、買い取り後に買主とトラブルになる心配もありません。

まとめ

お祓いは特別な効果が目に見えて発揮されるものではないため、気休めに思うかもしれません。しかし、新年に神社に参拝に行くように、新生活を気持ちよくスタートさせたいと思う人は多いものです。
事故物件ともなれば、気にする人は多く買主や借主がなかなか見つからないこともあるでしょう。近年空き家が増え、犯罪などを助長していると社会問題にもなっています。

さらなる問題を抱えないためにも、事故物件や訳あり物件を価値ある不動産に再生してくれる専門家に任せましょう。

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