事故物件を売るためのポイントを解説!知っておきたいことや相場も紹介
保有している物件が事故物件になってしまった場合「もう二度と売却できないかもしれない」と考えている人は少なくなりません。実は事故物件であったとしても、売るポイントを抑えておけば、売却できる可能性はあります。
そこでこの記事では、事故物件を売るためのポイントを解説します。売却活動を始める前に知っておくべきことややるべきこと、売却価格の目安なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
事故物件を売る前に知っておきたいこと
まずは、事故物件の定義を理解するところから始めましょう。詳細な定義については、国土交通省が制定したガイドラインをもとに解説します。
事故物件を売る際、売主と不動産業者には、いくつかの告知義務があります。告知義務を怠ってしまうと、後々トラブルになるおそれがあるため、こちらもあわせて理解しましょう。
事故物件の定義
事故物件とは、人が死亡する事件や事故が発生した物件のことです。具体的には、自殺や他殺などが該当し、マンションや一戸建て、土地を含むすべての不動産が対象となります。
事故物件かどうかは、心理的瑕疵にもとづいて決定されます。心理的瑕疵とは、居住者が心理的に不安を感じる要因がある物件のことです。
たとえば、隣地がごみ屋敷である場合や近隣に宗教施設や暴力団の施設がある場合、自殺や他殺が発生した物件、事故死があった物件、そして原因不明の死亡があった物件などが心理的瑕疵物件に該当します。
国土交通省によるガイドラインの制定
2021年5月20日、国土交通省は住居用不動産の事故物件についてのガイドライン案を発表し、同年10月8日に正式に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。
制定の背景には、事故物件に関する法律的な基準が曖昧で、不動産取引における現場の判断が困難であったことがあります。ガイドラインを制定することで、円滑な流通や安心できる取引を実現させる狙いがありました。
一例として、室内での自然死や事故について、何年前のものまで告知すべきかが現場の判断に委ねられており、同様のケースでも告知されたりされなかったりする曖昧さがありました。
ガイドラインでは、人の死に関する詳細は告知義務を定めています。しかし、病死や老衰などの自然死については、売主は買主に対して告知義務を負わないとされています。
告知義務
告知義務とは、売主や不動産業者が、物件の売却前に知っているすべての瑕疵を買主に伝える責任のことです。告知義務には、前述の心理的瑕疵も含まれます。
仮に告知義務を怠ってしまうと、買主から損害賠償請求を受けたり、売買契約が解除になったりする可能性があるため、注意が必要です。
売主
事故物件の売主には、買主に対して事故物件であることを正確に告知する義務があります。告知義務の対象となる事項は、以下のとおりです。
事件や事故の詳細
事件や事故の起きた具体的な年月日
事件や事故が起こった正確な場所
特殊清掃を行ったかどうか
上記の情報をきちんと伝えることで、買主が安心して取引できるように売主は努めなければなりません。契約後にトラブルへと発展しないように、伝えるべき情報は正確に伝えましょう。
不動産業者
不動産業者には、売買物件に対するさまざまな瑕疵について適切に告知する義務があります。具体的には、心理的瑕疵に加えて以下の3つが挙げられます。
物理的瑕疵
法的瑕疵
環境的瑕疵
物理的瑕疵とは、漏水や土壌汚染など、建物自体に存在する欠陥を指します。もし瑕疵が原因で建物の維持が困難な場合は、契約不適合とみなされ、売主に責任が問われるおそれがあるため、正確に現状を告知しましょう。
法的瑕疵とは、建物に対する法律上の制限を指します。建築基準法や消防法、都市計画法などの適用が含まれ、容積率や建ぺい率、防火設備などが適切に設置されているかを買主に伝えましょう。
環境的瑕疵とは、物件の周辺環境が劣悪な状態にあることです。暴力団や宗教団体の施設がある、または夜中に騒音が聞こえるなど、住居に暮らし始めると居住者に不利益が生じる可能性がある場合は、伝えなければなりません。
不動産業者は、上記の瑕疵について正確に告知し、買主が安心して取引できるよう努める必要があります。
事故物件の売却相場
事故物件の売却相場は、死因や状況によって異なります。ここからは、死因や状況ごとに価格がどのように変動するのかについて解説します。
物件が持つ条件によって差が出る
事故物件の売却価格は、瑕疵などの物件が持つ条件によって差が生じます。そもそも事故物件自体の取引が不動産全体から見ても少なく、明確な相場は存在していませんが、一般的には通常価格より10〜50%程度低くなります。全体的な傾向は、以下のとおりです。
死因 | 低減率 |
---|---|
自然死+特殊清掃の実施 | 20~30% |
自殺 | 30~50% |
殺人 | 50% |
事故物件の売却価格は、物件の立地や周辺環境によっても左右されます。たとえば、駅の近くや周辺に生活に欠かせない施設が多い場合、価格が大幅に下がらずに売却できる可能性が高くなります。
事故物件を売るためのポイント
事故物件を売るためのポイントは、以下の6つです。
特殊清掃をする
リフォームをする
お祓い・供養をする
期間をあける
更地にする
条件にあった売却方法を選ぶ
特殊清掃をする
事故物件を売却する際は、特殊清掃を実施して事故物件らしさを解消することで、悪い印象を払拭できます。特殊清掃の実施には40万円ほどかかるため、事前に不動産業者に清掃後の売却価格を確認したうえで、特殊清掃を行うべきかを判断しましょう。
ただし、特殊清掃を実施すれば、事故物件であることを告知する義務があり、確実に売却できるわけではありません。売却できない場合、赤字になるリスクも考慮に入れて、慎重な判断を下しましょう。
リフォームをする
事故物件を売却する際にリフォームを行い、いつでも人が住めるように準備を進めると、買い手が見つかりやすくなるでしょう。低価格で購入できるだけでなく、すぐに入居できる住宅は、事故物件かどうかを気にしない買主にとって、魅力的な不動産となるためです。
とくに、人が亡くなったことで床や壁に目立つ汚れがあるなら、その箇所だけでもリフォームを実施したほうが無難です。見栄えがよくなるだけでなく、リフォームによって物件の価値が向上し、売却価格が高くなる可能性もあります。
お祓い・供養をする
基本的に家の買主は、長期間、自分が暮らすための住居を探しているため、縁起に強いこだわりを持っている人も少なくありません。そのため、事故物件でお祓いや供養を行うことを検討しましょう。
お祓いや供養を行っても、買手の心理的瑕疵が完全に解消されることはありませんが、心理的な安心感は大きくなるでしょう。菩提寺に直接依頼したり、インターネットで僧侶を派遣するサービスを利用したりすることで、お祓いや供養を行えます。いずれも依頼にかかる費用は、約3~5万円です。
売主によっては、お祓いや供養に費用をかけるのは無駄に感じるかもしれません。しかし、買主の気持ちを第一に考え、お祓いや供養を行うことで、事故物件に対する不安が少なくなり、売却の成功率を高めることにつながります。
期間をあける
事故や事件の発生直後は、ネガティブな印象が先行してしまい、買手が見つかりづらいため、可能であれば数年ほど期間をあけてから売却活動を始めるとよいでしょう。期間を空けることで、事件や事故の印象が薄れ、買手の心理的な抵抗感が和らぐ可能性が高まります。
期間をあけて販売する場合は、その間の維持費や管理費も考慮する必要があります。また、市場の動向や物件の状態も変わるため、不動産会社と相談しながら売却のタイミングを見極めることが大切です。
売却を急がず、慎重に計画を立てることで、よりよい条件で売却できる可能性が高まります。なお、期間を空けても事故物件における告知義務がなくなるわけではありませんので、注意しましょう。
更地にする
数年経っても人々の記憶に残るほどの事件や事故が発生した場合は、特殊清掃やリフォームだけではネガティブな印象を払拭できないことが考えられます。そのような場合、建物自体を取り壊して更地にすることで、物件のイメージを回復させる方法が有効です。
解体にはコストがかかりますが、ネガティブな印象が残っている状態で売却するより更地にすることで売却しすくなるケースが多いです。ただし、更地にすると固定資産税や都市計画税が高くなるため、注意しましょう。
また、更地にしたあとも、近隣住民の記憶に残る事件や事故で物件に対する悪いイメージが拭いきれない場合もあります。その場合は、月極駐車場やコインパーキングとして利用するとよいでしょう。
条件にあった売却方法を選ぶ
事故物件を売却する際、不動産仲介で個人に物件を売却する方法と不動産業者に直接買い取ってもらう方法があります。いずれも売却の流れは基本的に同じですが、不動産業者に直接買い取ってもらう場合は販売活動が不要になるため、手間が少なくなるのが主な違いです。
どちらの売却方法が適しているかどうかは、物件ごとに異なります。簡単に説明すると、手間をかけてでも高額で販売したい場合は不動産仲介での売却、低価格で販売することになっても手間をかけたくない場合は直接買取が適していると考えられます。
不動産仲介と買取のメリット・デメリット
ここからは、不動産仲介と買取の各メリット・デメリットを解説します。両者の良し悪しを理解したうえで、どの売却方法がふさわしいのかを判断しましょう。
不動産仲介のメリット
不動産仲介は、主に以下の3つです。
直接買取より高く売れる可能性がある
広告活動を行う必要がない
高値で販売する工夫を施しやすい
第一に、買取よりも高価格で売却できる可能性がある点です。仲介では不動産会社に支払わなければならないのは仲介手数料のみのため、手数料を抑えられます。加えて、不動産が高価格で売却できるタイミングを見定めて売れるため、よりよい条件で契約成立する可能性が高まります。
時間と手間のかかる広告活動は、仲介する不動産会社が行うため、施策を考えるなどの業務を行う必要がないことも仲介販売のメリットのひとつです。自分でゼロから物件をアピールするより広範囲にアピールできるため、より高値で購入してくれる人と出会う可能性が高まるでしょう。
また、仲介販売では、購入を検討している人たちから意見を聞けるため、内覧を通じて検討者のフィードバックを得ることで、売却活動に役立てることが可能です。
たとえば、孤独死や自殺、事件現場などである事故物件の場合に「以前ベッドがあった場所が汚れているけど大丈夫?」などと聞かれた際、後に指摘を受けた箇所を特殊清掃によって綺麗にするなどが可能になります。
このように、不動産仲介には高価格での売却が期待できる点や購入検討者の意見を取り入れて売却活動を工夫できる点などのメリットがあります。
不動産仲介のデメリット
不動産仲介には、以下のデメリットがあることを把握しておきましょう。
短期間での売却は難しい
対応する業務が多い
仲介手数料がかかる
契約不適合責任の免責がない
まず、短期間では売却が難しいという点です。仲介での売却は、買主を探すところから始まります。見つけたあとも買主が住宅ローンを組むための審査や契約など、さまざまな手続きが求められるため、販売にかかる期間は買取より長くなる傾向があります。
次に、対応する業務が多い点もデメリットのひとつです。売主は、必要に応じて内覧を実施しなければならないため、内覧の準備やスケジュール調整、当日の対応などの業務が増えます。頻繁に内覧が行われる場合は、対応に追われることになり、ほかの業務が滞ってしまうリスクが考えられます。
また、仲介手数料がかかる点も不動産仲介のデメリットです。不動産会社が個人と仲介を行ってくれるため、その対価として売却価格に応じた仲介手数料を支払わなければなりません。仲介手数料は売主の負担となるため、手元に残る金額が減少することは理解しておきましょう。
最後に、契約不適合責任が免責されないことも把握しておくべきポイントです。直接買取では免責される場合がありますが、仲介の場合は売主が契約不適合責任を負うことになります。つまり、契約を結んだあとに不動産に欠陥が見つかった場合、売主がその責任を負わなければならないということです。
不動産買取のメリット
不動産買取には、数多くのメリットがあります。たとえば、以下の6つです。
短期間で売却できる
内覧に対応する必要がない
仲介手数料などのコストを抑えられる
契約解除される可能性が低い
契約不適合責任が免責される
近隣住民に知られずに売却できる
仲介販売と比較し、売却期間が短い傾向にあるのが直接買取のメリットです。流れとしては、不動産会社が買取の査定価格を提示し、売主が承諾すれば契約が成立します。
査定から引渡し、決済にかかる期間は、スムーズに進むと1か月ほどです。できるだけすぐに物件を売却したい場合は、直接買取が最適といえるでしょう。
さらに、直接買取なら内覧対応が不要になります。不動産会社が内覧のために室内環境やスケジュールを調整するため、内覧にかかる業務を行わずに売却することが可能です。
また、不動産会社が直接買い取りを行うため、個人と仲介する必要がありません。その結果、仲介手数料を支払う必要がなくなります。加えて、売主がリフォームやメンテナンス、クリーニングを行う必要もなくなるため、住宅の修繕にかかるコスト削減も可能です。
ほかにも、不動産会社が直接買い取るため、契約が確実に進み、売買契約が解除される可能性がほとんどない点もメリットとして挙げられます。そのため、契約不適合責任を負わずに済むため、売却後に不動産の不具合が見つかったとしても売主が費用を負担する必要がありません。
広告に掲載されないため、近所に知られずに売却できる点も買取ならではのメリットといえるでしょう。仲介販売の場合は広告活動が必要となり、周囲に売却を知られてしまいますが、買取ではその心配がありません。事故や事件が鮮烈だったケースなど、周囲の目を気にするに場合はとくに有効です。
不動産買取のデメリット
さまざまなメリットがある不動産買取ですが、以下のようなデメリットも存在します。
売却価格が低くなりやすい
直接買取できないこともある
まず、売却価格が低いことが挙げられます。直接買取の場合、買主となるのは不動産会社です。
不動産会社は、購入した不動産にリノベーションなどの付加価値を付け、再販売を行います。自社の利益を確実に確保するために、買取価格が相場の60~80%ほどになることも少なくありません。高価格での売却を希望する場合は、複数の不動産会社に相談するなど、比較検討を行うことが重要です。
不動産によっては、買取ができない場合があることも理解しておきましょう。建物や室内の状況がよくない場合でも買い取ってもらえることがほとんどですが、老朽化が進行しておりリノベーションが難しい物件など、再利用が不可能な物件については買取が拒否されるケースもあります。これらのケースでは、買取以外の売却方法を検討しなければなりません。
まとめ
事故物件とは、自殺や他殺など人の死に関する事件や事故が発生した物件のことを指します。心理的瑕疵を持つ物件であり、殺人事件があったなど、住む人が心理的に不安を感じる要因が含まれているのが特徴です。
国土交通省が2021年に策定したガイドラインによると、人の死についての告知義務が明確に規定されましたが、病死や老衰などの自然死については告知義務がありません。売主や不動産業者は、事故物件の詳細を正確に告知する義務があり、これを怠ると後々のトラブルに繋がる可能性があるため、注意が必要です。
事故物件の売却相場は、死因や物件の条件によって異なりますが、一般的には通常価格より10〜50%程度低くなることが多いです。売るためのポイントとして、特殊清掃やリフォーム、お祓い・供養の実施、売却までの期間を空ける、更地にするなどが挙げられます。
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