借地権価格の調べ方と計算方法は?借地権の種類別に紹介
「借地権価格を調べたいけれど、どのように調べるとよいのだろう」
「借地権価格の計算方法について知りたい」
借地権価格について、このような悩みを持っている人もいるのではないでしょうか。
借地権の契約や相続の際に、借地権価格が必要になりますが、専門知識が多くわかりにくいと感じる人もいるでしょう。調べ方や計算方法もさまざまあり、どの方法が適しているのかを見つけるだけでも大変です。
今回は、借地権価格のリサーチ方法と算出方法の解説を行います。本記事を読むことで、ケース別の借地権価格の調べるポイントと計算方法が把握できるので、ぜひご覧ください。
借地権価格とは
借地権の価値を表すために用いられ、借地権や借地権つき建物を売買するときに使われるものが借地権価格です。一言で借地権価格と言っても、税金や売買目的などケースによって計算方法が異なるため、金額にも違いが生じます。
土地を売却する際は、土地の所有者から譲渡承諾が必要です。また、売却時の契約内容次第で売買価格は変わります。
さらに、借地権価格は以下の点によっても変動します。
● 所在地
● 用途地域
● 接道状況
● 周辺環境など
借地権価格は、地価公示価格と連動していません。借地権の更新料や名義書換料などの支払い相場においても、どのくらいの借地権価格の割合かで算出されます。借地権価格の決め方と、借地権価格が必要なケースについて、以下で解説していきましょう。
借地権価格の決め方
借地権価格は、借地権割合を用いて決めます。借地権割合とは、土地における権利のなかで、借地権に占める割合です。借地権が設定されている場合、借地権と底地権に分けられ、借地権割合と底地権割合を合わせて1になるように計算されます。
借地権割合は全国で統一されておらず、土地によって異なります。借地権価格は「土地の価格×借地権割合」で算出が可能です。
借地権割合は国税庁の「財政評価基準 路線価図・評価倍率表」で確認できます。A〜Gで評価され、Aが最も高く90%、Gは30%です。路線価図にアルファベットが記載されていない部分は、借地権の取引慣行がない土地として一律20%に設定されています。
借地権価格が必要なケース
借地権価格は、借地権の相続が必要な場合に必要です。被相続人が借地権を保有していた場合は、借地権も相続の対象です。そのため、相続税を計算する際に借地権の評価が必要となり、借地権価格の計算をすることになります。
借地権価格が高くなった場合、相続税の支払いの発生や、相続税が高額になる可能性があります。借地権は譲渡でき、借地権をいくらで売却するか決める際も借地権価格が必要です。借地権割合が高い地域であるほど、借地権を高額で売却することができます。
借地権価格の調べ方と計算方法
借地権価格の調べ方と計算方法は、以下のケースによって異なります。
● 普通借地権の場合
● 定期借地権の場合
● 一時使用目的の借地権の場合
● 売買に用いる借地権の場合
ケースごとの借地権価格の算出方法について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
普通借地権の場合
普通借地権とは、契約の更新ができる借地権です。相続税路線価と借地権割合が普通借地権の基準となります。相続税路線価をもとにして借地面積をかけ、さらに借地権割合を掛けることで算出可能です。以下の例をもとに計算方法を紹介します。
更地価格:4,000万円
借地権割合:50%
4,000万円×50%=2,000万円
相続税路線価は毎年7月に発表され、税務署で確認できるほか、国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」でも確認が可能です。相続税路線価に記載されている値は千円単位となっており、たとえば500と記載されている場合は50万円となります。
実際に算出する際は、奥行価格補正率や側方路線影響加算率なども考える必要があるため、専門家への依頼がおすすめでしょう。
定期借地権の場合
定期借地権は、普通借地権と異なり更新ができません。定期借地権の計算方法は、以下となります。
自用地の評価額×(A÷B)×(C÷D)=定期借地権の評価額
A:定期借地権などの設定時に借地権者に帰属する経済的利益の総額
B:定期借地権など宅地の通常取引価額
C:課税時期における定期借地権などの残存期間年数に応じた基準年利率による複利年金原価率
D:定期借地権などの設定期間年数に応じた基準年利率による複利年金原価率
Aの「定期借地権などの設定時に借地権者に帰属する経済的利益の総額」は、以下の3つの合計額となります。
● 借地契約終了時に返還する必要のないお金の支払いや、財産の供与がある場合に支払う必要のあるお金または供与すべき財産の相当額
● 保証金・敷金など借地契約終了時に支払う保証金の預託があった際に、基準年率未満の約定利率による利率の支払いがある場合。または、無利息のときに特定の計算式で算出された金額
● 定期借地権を設定するときに、実質的に贈与を受けたと認められる差額地代がある場合に、特定の計算式によって算出された金額
上記の3つの金額は、国税庁のホームページの「宅地及び宅地の上に存する権利」に記載されている計算式で算出可能です。
一時使用目的の借地権の場合
一時使用目的の借地権は、工事現場の資材置き場や選挙事務所などに用いられます。一時使用目的の場合は借地借家法の適用はなく、期間が満了するときに消滅するため、更新などはありません。
また、通常の借地権と同じ扱いでの評価は適当ではないため、雑種地の賃借権の評価方法に則って評価されます。
一時使用目的の賃借権は法人での契約がほとんどなので、相続の対象にはなりません。しかし、まれに個人で賃借権を取得している可能性もあるため、その場合は相続財産と認定され、借地権価格の算出が必要です。算出方法は、雑種地の賃借権の評価方法で算出します。
賃借権の設定の対価として権利金など一時金の授受がある場合や、堅固な構築物を所有する場合「雑種地の自用地評価額×法定地上権割合または借地権割合のいずれか低い割合」で計算します。
その他の借地権の計算方法は「雑種地の自用地としての価額×法定地上権割合×2分の1」です。
法定地上権割合は、残存期間によって以下の割合となります。
● 残存期間5年以下:100分の5
● 残存期間5〜10年以下:100分の10
● 残存期間10〜15年以下:100分の15
● 残存期間15年以上:100分の20
借地権価格を間違って算出してしまうと、追徴課税の発生や還付の手続きに手間取ってしまうため注意が必要です。
売買に用いる借地権の場合
売買に用いられる借地権を調べる場合、過去の取引実績をもとに、購入を検討したくなるような金額に設定する必要があります。しかし、個人で金額を算出することは難しいため、借地権価格を算出する際は不動産会社の利用が一般的です。
不動産会社に依頼する際は、不動産売却の一括査定サイトを利用すると、借地権価格の相場が把握できます。しかし、価格は概算ではっきりとした価格は決まりません。売買による借地権価格には、以下のような要素が関わってきます。
● 売主と地主との関係性
● 更新料があるか
● 土地の立地
● ローン承諾があるか
● 地代の金額
● 購入する側にとって魅力のある借地権か
● 借地権の売却をどのくらい急いでいるか など
こだわりの強い買主の場合、借地権価格は高くなり、反対に買主が現れない場合は価格を下げる必要があります。借地権価格を計算する際は、借地権の対象となっている土地が所有権だったケースを想定し、トータルで安くなるようにしましょう。
借地の地代の相場と計算方法
借地の地代の相場を調べる際、定期借地権と普通借地権の2つのケースで相場が異なります。また、地代の計算をする際の方法もさまざまです。
ここでは、借地の地代の相場と計算方法について詳しく解説します。相場を把握し、適切な計算方法を用いて、地代を算出するための参考にしましょう。
相場
定期借地権の場合、借地上の建物が居住用か店舗用、または事業用など用途によって相場が変わります。地代の相場は、地価に対する年間を通しての地代の割合で決まります。
住宅:土地価格の2〜3%
店舗・事業用:土地価格の4〜5%
普通借地権の場合は、定期借地権よりも低く設定されています。住宅地では「固定資産税の3倍」程度が多く、地価の1%ほどで地代としては低い水準です。相場が低い分、借地を設定する際に借主から貸主に対して、高額な権利金を支払うことでバランスをとっています。
権利金とは、権利を設定する代わりの一時金としての意味合いが強く、基本的には返還されません。賃貸物件の礼金と似た役目を持っていると解釈してよいでしょう。
計算方法
借地の地代の計算方法は、主に以下の6種類が用いられます。
● 積算法
● 収益分析法
● 差額配分法
● 利回り法
● スライド法
● 賃貸事例比較法
ケースによって土地の求め方が変わるため、間違いがないようしっかり把握しましょう。
積算法
積算法は、土地の更地価格に、該当する不動産の年間予想利益である期待利回りを掛けた額に経費を足して割り出す方法です。売買価格の目安としての賃料を求めるためのもので、地代の算出にも用いられます。計算方法は「地代=更地価格×期待利回り+経費」です。
期待利回りは土地価格の2%程度に設定するケースが多く、都心部では3〜3.5%程度が理想です。経費は固定資産税や都市計画税などの税金のほかに、土地の維持管理に必要な費用も含みます。
収益分析法
収益分析法は、借地を事業用として借地人に貸し出す際に使われる計算方法です。借地人が土地を利用して利益を得る、もしくは土地を使って借地人がもらえる利益がはっきりわかるときにも有効です。
収益分析法で地代を割り出す場合、貢献度が高いほど金額が高くなりますが、反対に貢献度が低いと金額も低くなります。収益分析法は、賃貸物件から生じる借地人の事業予想収益のどちらかをベースに算出され、計算方法は「地代=年間の予想収益+必要経費」です。
収益分析法で割り出すには複雑なリサーチが必要であるほか、利用条件も多いため、地代を知りたい場合は専門家へ依頼しましょう。
差額配分法
差額配分法は、新しく設定する適切な賃料と現時点での賃料との差額を割り出します。また、契約内容や契約に至った経緯を考慮し、差額から地主に帰属する分を割り出して地代に足すか減らす計算方法です。
計算式は「地代=現行の賃料+(新規賃料―現行の賃料)×差額配分率」となります。差額配分率の相場は、2分の1〜3分の1程度とされています。差額が発生している原因を分析し、契約内容に関する分析を行ったうえで適切に求める必要があります。
利回り法
利回り法の計算方法は「地代=現在の更地価格×継続賃料利回り+必要経費」となります。考え方自体は積算法と変わりませんが、利回り法は地代を変更するときに使われる場合がほとんどです。
また、利回り法では継続賃料利回りをかけます。継続賃料利回りの割り出し方は「現在の地代で合意した段階での更地価格÷現時点で合意した地代=継続賃料利回り」となっています。
利回り法での計算では、更地価格の変動幅や、近隣地域での取引事例の利回りなどを考慮して算出される場合もあります。
スライド法
スライド法は、賃料が定められたときから物価が変わった際に、現状に応じて賃料を変更させる方法です。計算方法は「地代=(今現在の地代―予想される必要経費)×変動率+現時点でかかっている必要経費」となります。
物価が上がっている場合は賃料を上げ、物価が下がっている場合は賃料も下げます。物価の変動率は、総務省ホームページに掲載されている「消費者物価指数」から確認が可能です。
スライド法は、経済指標などの客観的なデータをもとにして地代を割り出せますが、さまざまな要因の考慮が困難です。また、何らかの事情がある場合には、資産賃料の調整時に理由を記載したうえで、説得力のある判断をする必要があります。
賃貸事例比較法
賃貸事例比較法は、周辺の類似する物件の家賃相場を比較して、賃料を導き出します。所有する物件と似通った条件を持つ物件の家賃情報を集め、物件の特徴や階数、立地などの要因に沿って適切な賃料を割り出します。
注意点は、近隣に土地の賃貸例がないと利用できないほか、土地の形やサイズなどによって適切な価格が割り出せません。とくに都市部以外では類似の物件を集めにくいため、賃貸事例比較法を用いるメリットは大きくありません。
借地権の更新料の相場と計算方法
借地権の更新料を支払うかどうかは法律で決められているわけではなく、借主と貸主との間で決定します。更新には合意更新と法定更新の2種類があり、合意更新のケースでは借地権者と貸主の間で合意する必要はありません。
反対に法定更新の場合、更新時に更新料を支払うと決めている場合は、支払う必要があります。以下で借地権の更新料について解説しますので、ぜひご覧ください。
相場
借地権の更新料は、更地価格の3〜5%が一般的な相場です。地域によって割合は異なり、都心部では10%程度と高めに設定される場合もあります。都心部の土地の価値が高まっている傾向にあるのが主な理由です。
借地契約を結ぶ際に、契約書内に更新料に関する記載がない場合、基本的に更新料の支払い義務はありません。しかし、借地契約の更新時に支払っていた場合は、支払い義務が生じるため注意が必要です。
計算方法
更新料は「更新料の相場=更地価格×借地権割合×3〜10%」の計算方法によって割り出し可能です。この計算式は一般的に使われているもので、法律上で決められたものではありません。
更地価格は「地価」とも言われており、土地を市場で自由に販売した際の価格です。更地価格は、更地となっている土地の利用方法などによって変わります。
更地価格は「路線価×土地の面積」となり、路線価は道路に面する土地1平方メートルあたりの価格です。路線価と借地権割合は先述したとおり、国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
まとめ
今回は、借地権価格の調べ方や計算方法について解説しました。借地権価格を調べる際、以下のケースによって調べ方は異なります。
● 普通借地権の場合
● 定期借地権の場合
● 一時使用目的の借地権の場合
● 売買に用いる借地権の場合
計算方法も異なるほか、個人で正確な価格を算出することは難しいため、不動産会社など専門家に依頼して算出するとよいでしょう。
借地権の更新料の支払いは、借主と貸主との間で決めます。更新には以下の2種類があります。
● 合意更新
● 法定更新
合意更新の場合は、借地権者と貸主との間で合意がなくとも自動更新されます。法定更新で更新時に支払うと決めている場合は、更新料の支払いが発生するため、注意が必要です。
借地権の更新料の相場は、3〜5%程度が一般的です。しかし、都心部では土地の価値が上がっていることから、10%程度と高めに設定されているケースもあります。
また、借地契約の際に更新料についての記載が契約書にない場合は、更新料を支払う必要はありません。ただ、過去に支払いがあった場合は、支払い義務が発生するため注意が必要です。
借地権価格の割り出し方はさまざまあり、正確な価格を個人で割り出すのは困難な場合が多いでしょう。その際は、不動産業者などの専門業者に依頼しましょう。